【作品1】検品工場
死を悼みたいと思った。
あまりに薄っぺらい死たち。
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リアリティ番組に出演していたKさんが自殺した。
新聞やLINEニュースなんかで記事がたくさん出た。
TwitterやInstagramのツイートやコメントでは、多くの人が冥福を祈り、残念だったと言った。
今や彼女について語る言の葉は少ない。
何度も繰り返し語られ、拡散され、死との遭遇が上塗りされるうちに、当初の衝撃と関心は薄れる。
そのうち、彼女が本当に生きていたのか、定かではなくなってくるような、そんな気持ちにもなってくる。ネット上にのみ存在していたコンテンツなのではないかと。そんな非人間的な錯覚を起こしそうになる。
いや、そもそもそれは本当に錯覚なのだろうか?
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時々、弟がついに自殺に成功してしまうのではないかと想像する。
社会の中で上手く機能できない、生産も再生産もできていない彼は、ことこのネオリベ社会において「不良品」である。
私自身は、4年制大学を卒業し、一流と呼ばれる企業に就職し、さあ立派な労働者になるぞと、自身の「市場価値」をあげるぞと、半ば強迫的に考えたこともあった。
その「良品」の私は、貼り付けたような笑顔で声が出せずに、窒息し、少しづつ死んだ。
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作中、コンベアを流れていく**たちは、彼女であり、彼であり、私である。
彼女も彼も私も、顧みられることはない。
ならば、今、ここで、葬式をしてしまおう。
殺し、悼み、殺される、無限ループの中に私たちはいる。
私たちは、おそらく、既に死んでいるのだ。